9割以上の精度で食品腐敗やアレルゲンを自動識別できる電子鼻(e-Nose)を開発

https://doi.org/10.1126/sciadv.aec7965

論文タイトル

食品分類のためのスケーラブルなマルチプレックス機械学習ガスセンサーチップ
Scalable multiplexed machine learning gas sensor chips for food classification

ビジネスインサイト

  • 単一ステップのマイクロディスペンシング法やドロップキャスティングによる製造の簡素化がもたらす、ガスセンサーチップの生産コスト削減および大量生産(スケールアップ)への影響可能性。
  • 室温作動型16要素アレイと機械学習の統合、およびスマートフォンアプリ連携による、スマート家電(冷蔵庫等)やポータブルアレルゲン検知器市場への影響可能性。

概要

本研究は、カーボンナノチューブ電界効果トランジスタを用いた16要素のモノリシックガスセンサーチップと機械学習アルゴリズムを組み合わせることで、室温で作動する高感度な電子ノーズシステムを開発した。これにより、食品の腐敗やナッツ類のアレルゲンを含む16種類の対象物を92.6%の全体予測精度で自動識別できることを明らかにした。

研究の詳細

背景

従来のマルチプレックスガスセンサーアレイは、組成が類似したセンサー材料の重複により応答が高度に相関してしまう課題や、多ステップの堆積プロセスが製造のスケーラビリティ(拡張性)を妨げる限界があった。また、従来の金属酸化物センサーのように高温を必要とする構造は、高温で分解する可能性のあるポリマーなどの材料選択を制限していた。本研究は、これらの課題を解決し、室温で作動する高拡張性なセンサーチップの開発を目的とした。

主要な結果

  • 自動ピペッティングシステムに対応した単一ステップのマイクロディスペンシング法を用いて、完全に異なるセンシング層を備えた16要素のモノリシックな不均一カーボンナノチューブ電界効果トランジスタアレイチップを開発した。
  • 開発したチップを機械学習アルゴリズムと組み合わせることで、食品の腐敗(生の鶏肉、牛乳、卵)やナッツ類のアレルゲン(クルミ、ヘーゼルナッツ、カシューナッツ、ピーナッツなど)を含む16種類の異なる対象物の分類において、92.6%の全体予測精度を達成した。
  • 平均的な殻なしクルミの約100分の1に相当する0.05グラムの単離されたクルミを嗅ぎ分ける高い感度を示し、室温で作動するため熱に弱いポリマーなどの多様な材料の利用を可能にした。

材料と方法

  • 導電性材料としてカーボンナノチューブを用い、室温で作動する16要素のモノリシックガスセンサーチップを構築した。各センサー表面には、自動ピペッティングシステムに対応した単一ステップのマイクロディスペンシング(ドロップキャスティング)法によってそれぞれ異なるガス感応膜を堆積させた。
  • 機械学習モデルを用いて、7種類の食品(いちご、ブルーベリー、バナナ、くるみ、ヘーゼルナッツ、カシューナッツ、ピーナッツ)および、新鮮な状態・室温で24時間および48時間放置した3種類の食品(生の鶏肉、牛乳、卵)のガス応答プロファイル(ガスの指紋)のパターン認識をトレーニングし、分類能力を評価した。

実用化までのフェーズ

基礎研究・プロトタイプ検証フェーズ(16種類の対象物を識別するチップの開発と、論文外の成果としてiPhoneアプリで操作可能なポータブルバージョンのプロトタイプが作製された段階)。

社会実装に向けた課題

他の様々なガスが混在する実際の環境(例:サラダやケーキの中にくるみが含まれている環境、または冷蔵庫の中に他の複数の食品と一緒に腐敗した食品が置かれている環境)におけるデバイスの感度や信頼性の検証。

次世代デバイスに向けた、より幅広い環境下でのテスト実施、および感度と信頼性のさらなる継続的な改善。

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