豆腐・乳製品をアップサイクルした素材を用いたCO2直接空気回収(DAC)技術

https://doi.org/10.1073/pnas.2535689123

論文タイトル

食品廃棄物由来のアミロイド吸着剤による循環型および非加熱の大気中CO2回収
Circular and athermal atmospheric CO2 capture by food waste-derived amyloid sorbents

ビジネスインサイト

  • 従来の直接空気回収(DAC)技術で不可欠だったエネルギー集約的な熱再生(加熱や陰圧)ステップを完全に排除し、室温でのマイルドな酸・アルカリミスト噴霧(10〜12分間)のみで吸着剤を再生可能にしたことで、DACプロセスの運用コスト削減と大幅な省エネ化に影響を与える可能性。
  • 豊富で安価な乳製品(ホエイ)や豆腐の製造廃棄物ストリームを原材料としてアップサイクルし、性能低下後は農業用肥料やバイオ燃料へと安全に再利用・ 再統合(reintegrate)できるため、従来の合成吸着剤のような急速な分解や有害な副産物の生成を回避し、完全有機で無毒なサーキュラーエコノミー(循環型経済)モデルの構築に影響を与える可能性。

概要

乳製品および豆腐の製造廃棄物から回収されたタンパク質をアップサイクルしたアミロイド線維マイクロビーズ(吸着剤)を用い、熱を一切加えない室温下でのマイルドな酸・アルカリミスト噴霧(10〜12分間)による脱着戦略を組み合わせることで、大気中から高効率かつ極めて安定に二酸化炭素を直接空気回収(DAC)できる循環型システムを明らかにした。

研究の詳細

背景

従来の流動性アミンなどを用いた直接空気回収(DAC)技術は、周囲の空気下でのCO2吸着容量が低く、エネルギー集約的な熱再生を必要とし、さらに化学的劣化によって有害な副産物を生成するリスクがあった。一方、既存の生物由来(バイオベース)の代替吸着剤は、一般にCO2吸着容量が低く安定性が悪いという限界があった。世界の二酸化炭素排出の一因である食品廃棄物を利用し、従来の熱依存システムから脱却した低エネルギーで循環型の大気中CO2回収ルートの確立が課題であった。

主要な結果

  • 乳製品(ホエイ)および豆腐の廃棄物ストリームから回収されたタンパク質を、長期にわたり安定な糸状の構造であるアミロイド線維へと組み立て、水酸化カリウム(KOH)処理を施して直径約0.5〜1 cmの多孔質マイクロビーズへと成形した。
  • 原子レベルの設計とテンプレート成形により、線維内のリシン(lysine)およびグルタミン(glutamine)残基、ならびにマイルドなKOH処理によって導入されたヒドロキシル基が、CO2回収のための豊富な活性サイトを形成し、環境空気下(ambient air)で最大2.20 mmol g−1(材料1グラムあたり97ミリグラムのCO2を抽出)、模擬空気下(無酸素)で2.51 mmol g−1の吸着容量を達成した。この性能は、従来のDAC技術の容量を10%〜50%上回る。
  • 捕集されたCO2の放出(吸着剤の再生)は、熱の投入を一切行うことなく、室温下で希酸と希アルカリのミストを交互に噴霧(10〜12分以内)する戦略によって達成された。
  • ラボテストにおいて、このアミロイドビーズ、酸、塩基はすべて再利用可能であり、性能の大きな低下なしに30サイクルの吸着・放出プロセスにわたって安定性を維持した。
  • ライフサイクルアセスメント(LCA)、効率製品ランキング(ranking efficiency product)、および技術経済分析(TEA)により、従来の吸着剤と比較して優れた持続可能性とコスト効率、および寿命全体を通じた環境汚染の少なさが実証された。

材料と方法

  • 乳製品(ホエイ)および豆腐の製造廃棄物ストリームからタンパク質を抽出し、アミロイド線維へと自己組織化させ、水酸化カリウム(KOH)と組み合わせて直径約0.5〜1 cmの多孔質マイクロビーズへと成形した。
  • 環境空気下および模擬空気下(無酸素)におけるCO2吸着容量を計測し、室温下で希酸・希アルカリミストを10〜12分間交互に噴霧するミスト駆動の脱着システムにより、熱を加えずにCO2を回収・再生した。
  • 性能の安定性を検証するための30サイクルにわたる吸着・脱着反復実験、およびライフサイクルアセスメント(LCA)、効率製品ランキング、技術経済分析(TEA)を実施した。

実用化までのフェーズ

基礎研究フェーズ(制御された実験室の環境にて数グラムの材料を使用し、約50グラムのCO2を回収した段階)。

社会実装に向けた課題

実際の乳製品(ホエイ)や豆腐の製造廃棄物ストリームから大量のタンパク質を安定的に抽出し、アミロイド線維構造へと効率的かつ均一に組み立て・アップサイクルする工業的製造プロセスの確立、ラボスケールから産業・商業スケールへと拡大した際にも高いCO2吸着容量と効率を維持できるかどうかのスケールアップ検証(調査継続中とのこと)、数千サイクルに及ぶ長期連続運用時におけるビーズの物理的・化学的耐久性の実証、実環境下における1トンあたりの正確なCO2回収コストの算出、および実稼働工業プロセス(広く普及しているスプレーベースの産業技術との適合性など)への最適化。

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