【世界125カ国での実験】被験者の約7割が自身の利益を削ってでも気候変動対策へ協力すると回答

https://doi.org/10.1126/science.aec9483

論文タイトル

ホモ・クーペランス(協力する人類):人間の協力の性質を理解する
Homo cooperans: Understanding the nature of human cooperation

ビジネスインサイト

  • 他者の協力意思に対する悲観的な誤認(実際の69%に対し予測47%)は、事実に基づくシンプルな情報提供によって修正可能であり、環境ビジネスやサステナビリティ分野におけるステークホルダーの協力行動を低コストで効果的に引き出せる可能性。
  • 他者への協力期待が実際の行動に与える影響度は文化や国(例:フィンランドでは影響が大、エジプトでは小)によって大幅に異なるため、グローバル展開するプラットフォームや制度設計において、地域の歴史的・文化的背景に合わせた最適化が市場浸透の鍵となる可能性。

概要

世界125カ国の101,123人を対象とした実験により、世界全体の69%が自身の利益を削ってでも気候変動対策(共通財)への協力を選択すること、および他者の協力意思を過小評価する普遍的な傾向を報告。

研究の詳細

背景

人類の幸福はクリーンな空気や安定した気候といった共通財の提供に依存しており、見知らぬ他者との協力が不可欠である。しかし、これまではグローバル規模の代表的なデータが存在しなかったため、人間の協力行動の普及率や、信念・規範・嗜好といった個人レベルの決定要因が普遍的なものか文化固有のものか、また情報提供によって他者への信念を変え協力を促進できるかは未解明であった。

主要な結果

  • グローバル規模での高い協力率: 世界全体で回答者の69%が、確実な私的報酬(100米ドル)を放棄し、共通財(地球温暖化防止への400米ドルの寄付)につながる協力行動(70米ドル)を選択した。
  • 協力決定を予測する個人要因: 協力行動は、他者の協力に対する期待、社会的規範の承認、共通財への嗜好(利他主義、忍耐強さ、リスク態度)、および高い教育水準と正に相関した。なお、世界平均では男女差や年齢による影響は見られなかった。
  • 文化特異的な決定要因: 他者の協力に対する期待が自身の決定に与える影響の大きさは国によって大幅に異なり(例:フィンランドでは非常に大きく、エジプトでははるかに小さい)、これらの要因は歴史的・文化的文脈に深く根ざしている。
  • 普遍的な悲観的誤認: 実際のグローバル協力率が69%であるのに対し、他者の協力予測率は平均47%にとどまり、この過小評価は125カ国中124カ国で確認された。特にドイツでは実際の協力率86.0%に対し予測が47.6%と、約40パーセンテージポイントも過小評価していた。
  • 情報提供による誤認修正: ランダムに選ばれたグループに「世界人口の大部分が気候変動を深刻な問題と見なしている」という事実を提示したところ、他者への協力期待が高まり、実際の協力行動が有意に増加した。

材料と方法

  • 世界の大人の人口の92%を代表する、125の代表的な国サンプルから合計101,123人を対象に、標準化されインセンティブを付与した選択実験を実施した。
  • 各参加者を自国の見知らぬ他者とペアにし、非協力(100米ドルの安全な報酬)か、協力(70米ドルの報酬。ただし両者が協力を選択した場合は地球温暖化対策へ400米ドルが寄付される)のいずれかを選択させる社会的ジレンマに直面させた。
  • グローバル調査内にランダム化された情報処理を組み込み、事実の提示が他者の協力に対する信念や実際の協力決定に与える影響を検証した。

実用化までのフェーズ

基礎行動科学・政策エビデンス確立フェーズ。

社会実装に向けた課題

公共政策、国際的な環境プロジェクト、あるいは企業のESG・サステナビリティ施策などの実社会の制度設計に落とし込み、長期的な行動変容の持続性や経済的・社会的有効性の大規模検証。

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